古川裕倫の「いろどり徒然草」6月号

部下にモノ言えないシンドローム
~日本企業の基本の基本がおかしくなってきている~

「部下を”キチンと”指導していますか?」という問いかけに、どれだけの人がYESと答えられるだろうか。

知り合いの企業経営者の悩みのいくつかは、「ポワーンとした社風」についてである。どこか危機感が薄く、現状に満足してぬるま湯に浸かっている。変化を嫌い、イノベーションをしない。

確かに社員自身も改めるべきだが、どうやらマネジメント側にも責任はありそうである。

「しない・できない」の理由に、「忙しい」がある。では、ポワーンとした社内のその「忙しさ」とは何か。

その正体の1つは、相手にモノが言えないために起こる、コミュニケーション不足であるとわたしは思う。例えば、求める仕事の質はどれくらいか、納期はいつか、などの必要な情報が共有できていない。同じミスを繰り返す部下に、指摘ができない。 常日頃から、正しいことと正しくないことについて指導ができていない。だから、社内はいつも右往左往する。ロスが増え、どんどんどんどん「忙しく」なる。「忙しい」から、チャレンジが減る。ますます社内はポワーンとする。

生産性高く仕事を進めるためには、社員一人一人が当たり前のことを当たり前にできることが大切である。それにはコミュニケーション、つまり、マネジメント層からの適切な「指示」や「指導」が必要だ。知らない人にはきちんと教え、気付かない人には言って聞かせ、時に叱り、仕事の厳しさも教えなければならない。仕事に緊張感を持たせ基本を徹底させることは、マネジメント層の責務である。

それができないのは、能力が不足しているからではない。多くは、「部下にモノが言えない」と言った基本姿勢に問題がある。部下と向き合わず、腰が引けている。部下から逃げているとも言えなくはない。

「三遊間のゴロをとりに行け」とは、以前お世話になった経営者の方がよくおっしゃっていた言葉だ。三遊間のゴロとは、野球で三塁手とショートストップ(遊撃手)の間に落ちた球のことだ。自分もとれるが、向こうの選手もとれる。自分が飛び出してうまく拾えればいいが、失敗すればひんしゅくを買う。つまり、できればとりたくない球であるが、そう言う球(仕事)こそ積極的にとりに行きなさい、というのが彼のメッセージだ。部下には耳の痛い言葉だが、ことあるごとくそう発信される。だから、部下も嫌な仕事から逃げない。逃げないから、鍛えられる。

もう30年は経っていると思うが、「コーチング」が大ブレークしている。プロスポーツ選手の育成に由来する指導方法で、上手に活用できればその分大きな成長を期待できる。

昭和のスパルタ教育時代も終わった。「うさぎ飛び」や「水を飲まずに運動せよ」などはただの精神修養だけで、医学的根拠はないことが分かっている。前のメルマガでもご紹介したように、1980年代には「堤義明が語る 休日が欲しければ管理職を辞めよ」と言うタイトルの本もあった。今こんなことを言えば「ブラック企業」のラベルが貼られて大問題となる。「パワハラ・セクハラ」への理解・関心も高まっている。

しかし、はき違えてはいけないのは、「セクハラ・パワハラをしないこと」と、「部下を甘やかすこと」は違う。人材教育には時に「叱ること」も必要なのに、コーチングという名のもとに、猫も杓子も「君ならどうしたい」という風潮もある。確かに、それなりの人を鍛えるにはコーチングは効果的だが、ほどんど知識や経験のない新人や若手の場合は、ティーチングによって指導する方が効率的だ。相手にヒントを与え気付きを待つやり方も自発性を養う意味では悪くはないが、それにかかる時間も考えなければならない。常に競争環境にある企業は、社員教育にもスピードと生産性が求められる。どうすれば短時間で新人教育を行えるのか、アドラー心理学論者に聞いてみたい。大企業の人事担当なども「叱らずに褒める」ばかりの研修しかできないと首を傾げている。

要は、セクハラ・パワハラやコーチングを楯に、本来行うべき「指導」から、上司が逃げているのである。「余計なことを言って嫌われたくない」という安易な考えもあるのかもしれない。しかし、自分大事は二の次で、マネージメント層が考えるべきは、会社であり、部下である。

「モノが言えないポワーンとした」日本企業は、世界に置いていかれる。既に多くのグローバル企業が日本で活躍しているが、明確なJob Descriptiionや評価基準を持つ彼らの仕事ぶりはシビアである。コミュニケーションは日本よりずっと簡潔明快・率直なものであり、優秀な企業においては360度評価制度も導入している。マネージャーは同僚や部下から評価され、より多くの指摘やアドバイスを受ける。自分かわいさで仕事をしている場合ではない。より高い成果を出すため、お互いに言うべきところは言わねばならない。

そもそも日本は、控え目というか、思うところを察して欲しいという雰囲気がある。曖昧でモノ言わぬ「腰抜け・腑抜け」のままでは、生産性は上がらない。働き方改革は、日々のコミュニケーション方法を見直す良い機会かもしれない。

上司や先輩は、多くの場合先に退職する。だからこそ、残される部下を過保護にしてはいけない。後で困るのは部下である。これは、親と子の関係でも同じだ。つまり、福沢諭吉のいう「独立自尊」である。

モノを言い合ってでも会社を良くしたいと思う若手も、叱ってくれる上司から学びたいと考える後輩も、大勢いる。むしろ、最近の若手はキャリアについてしっかりとした考えを持っている。転職や独立にどんな経験が必要かも頭の中にあり、成果を出せるようになりたいと前向きである。エスカレーターで上がってきた(我々)昭和人とは違う。中にはちょっと言われてヘコむ者もいるかもしれないが、多くはアドバイスや厳しさを次への肥やしとして成長していく。

「本当の優しさとは厳しさも含む」という、一見時代錯誤とも見えるイノベーションが必要である。過去、自分に気付きを与え、成長させてくれた人はどんな人だったか、振り返ってみてはいかがだろうか。

「今嫌われても将来感謝される上司」、「ピシッとモノ言えるマネジメント」になろう。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」5月号

読書の効用
~月額数百円のビジネススクール~

「馬を水飲み場に連れて行くことができても、水を飲ませることはできない」

「役に立つから」と親や先輩がいくら言ったところで、読書をしない人はしない。今でこそ偉そうに本を書いている私も、そうだった。

転機は、38歳の時だ。

「君、2ヶ月後にはニューヨークだろう。これを読んでおきなさい。」
私のメンターの一人であり当時の上司であった島田さん(現、津田塾大学理事長)はそう言って、山積みの本をドーンと私の机の上に置いていった。ちょうど、私の海外転勤が決まった頃である。経営書だとか、情報通信の本だとか、とにかく色々なジャンルの本が入っていた。

当時の私は、例えるなら”機関車”だ。「よく働く」とは言われたが、「頭がいい」と言われたことは1回もなかった。要するに、何も考えず、ただ一生懸命働いた。ずーっと残業したり、土日も出勤したりしていた。研修へもほとんど行かず、本も読まず、学びと言えばOJTだけだった。

だから、いただいた本を読んだ時は、新鮮な衝撃を受けた。「点」でしか分かっていなかった物事が、「こういうことだったのか」とどんどんと繋がっていく。全て読み終え、今度は自分でも本屋へ行ってみた。一度分かると、なるほど、本の山=宝の山である。

「名経営者には、読書家が多い」が、私の持論だ。なにも「経営者になるために読書をせよ」とは言わないが、学ぶ姿勢を持っている人は、周囲の信頼も得やすい。読書は非常に効果の高い「投資」だ。安ければ数百円で、偉人・先人の知恵に触れることができる。著名人の講演を聞くのに1回数千円から数万円支払うことを考えれば、エッセンスが詰まった本の貴重さが分かる。

◇何故読むか
(1)物事の流れを知ることができる
(2)知識が増える
(3)道理が分かるようになる
(4)自分がしたことのない経験ができる(疑似体験ではあるが)
(5)理解力・説明力・人間力が鍛えられる

◇何を読むか
(1)先人の教え「人は新刊にすぐ興味を持つが、(古くても)良書を読め」。
(2)ビネスパーソン向けお勧めジャンルは、「ビジネス書」「自己啓発書」「歴史書」「自伝」。
(3)書店でパラパラ見て、自分の役に立ちそうなことが2−3個あれば買ってみる。
(4)「易しい本」を選ぶ。「先生」を目指すわけでなければ、英文学なら日本語訳、古典なら現代語訳でいい。最初から難しい原書を買うから読み切れない。興味があるものだけ、原書を後で読む。

◇どう読むか
(1)「自分の考え方や行動」と「本」とを比較しながら読む。
(2)線を引いたり、折り込みを入れたり、「なるほど」「ホント?」
などとコメントを書き込む。
(3)良い箇所、良い本は時間をおいて繰り返し読む。
(4)「つまらない」と思ったら、サッサと読むのを止める。別の本に
取りかかる。10冊中2冊ぐらい「挫折本」や「積ん読」があってもいい。
全ページ読む必要はない。
(5)読んで知識が増えたら、実行に移す。「知行合一」。 

◇どれだけ読むか
(1)まずは最低月1冊読む。2週間に1冊(年間26冊)読めたらなお良い。
読書に慣れている人は、1週間に1冊(年間52冊)を目指す。
(2)2万円ぐらいをポケットに入れ、書店で「大人買い」をしてみるの
もいいきっかけとなる。

◇「時間がない」と言う人は
(1)1日15分、隙間時間を見つける。一冊読むのに3、4時間かかるとして、これだけで2週間に1冊(年間26冊)読める。
(2)本当に時間がないという人は、何かを止めてみる。吉田兼好いわく、「何事も捨てじと取り持てば、一事もなさぬなりけり」。(何事も捨てずに全部やろうとしたら、なにも成し遂げることができない)

人間、1度読書をする習慣が身につくと、後は自然と学び続けるようになる。スキルを磨いたり人間力を高めたり、自己研鑽し続けることは重要である。

ポイントは、「気付き」だ。気付いた時に、人は最も成長する。これは自分だけでなく、部下でも子どもでも同じことであり、本は、いろんな気付きを得るための大変便利なツールと言える。新しい考え方やノウハウをただ「知る」だけでなく、自分のできていることできていないことを新たに発見できたり、他人からもらったアドバイスをより深く咀嚼で
きたりするようになる。対面で言われて分からなかったことも、活字を通してみるとすんなりと入ってくることもある。主催している無料読書会が7月に第100回を迎えるが、上記についてはここでも共感をいただいている。

最後に、以下、「立志塾」で毎月受講生に提出いただいている課題(気づきメモ)を一部抜粋したい。講師含め、会社も職種も年齢も異なるメンバーが、半年を通して意見を交わし合い、学び合う。私自身、受講生から多くの気付きをいただいている。

◇自分は無意識に枠の中だけで物事を考えているのだと思い、驚きました。行動としては、枠の中(コンフォートゾーン)から外に出ようと意識してはいるものの、やはり考え方は枠の中を中心に考えているようなので、意識的に枠の外をイメージしないと、と感じました。

◇ただ業務上優秀なだけのリーダーでは部下はついてこず、他部署や上長の説得を行ったとしてもそもそも人間力が低評価な人物では説得に成功するのはやはり難しい。人事評価に直接的につながらないとしても右脳の面も大事にして両輪を駆使できる人物になりたいと思った。

◇「First come, First served.」スケジュールを安易に変えない。約束を守る⇒信頼につながる。最初に決めた予定をきちんと実行する事は信頼関係を築くのに必要だと思う。

◇M&Aのニュースは株価にも大きな影響を与えますが、M&Aの内容まで深く考える事が出来ていませんでした。M&Aによるメリット、デメリットを考え、目先の業績ではなく長期で見た話を出来るようになりたい。

◇人を説得することが非常に難しいと感じることが良くある中で、自分の理論で説得することに注力してしまいがちだったが、「相手は思い通りにはならないし、変えられないもの」と思えば、すっと腹落ちすることができた。説得に心的ストレスは感じないようにし、また別の進め方を考えていかないといけないと思った。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」4月号

自己開示のすゝめ

「自己開示が大事である」とは、手品師マギー司郎さんの教えである。

数年前、彼が子どもに手品を教えるのをテレビで見た。2日間かけて、子ども達は手品をマスターしていく。1日目の終わり、マギーさんは子ども達に「家に帰ったらお父さんとお母さんに自分のダメなところを聞いて来る」という宿題を出した。そして翌日、宿題をしてきた子ども達に、次のような話をする。

「自分が手品をする時には、まず初めにクラスメイトの前で、例えば”宿題をすぐにやらない”とか”食べ物の好き嫌が多い”などと話すんです。そうすると何が起こるかというと、手品をやる側と見る側の心の距離がぐっと縮まる。そうやってから手品をするから、ワッと受ける。だから自己開示というのは、とても大事なことなんですよ」

1ヶ月後ぐらいに彼のステージがあるというので、私は自分の目で確かめてみようと観に行くことにした。まず出てきたのは、Mr.マリックさんだった。車が出てくるような、すごい手品を披露してみせる。その次が、マギー司郎さんだ。ふらふらと舞台袖から出てきたと思えば、マイクに頭をぶつけて笑いをとる。早速簡単な手品をするも、失敗。会場がどっと沸く。そして、「最近よく女房に叱られるんです。後1回だけ、チャンスをください」と言って、もう1度手品をしてみせる。先ほどよりも遥かに難しい手品を、今度はズバッと鮮やかに成功させる。会場が、割れんばかりの拍手に包まれる。心を一にするプロの技に、私は大変感銘を受けた。

私もそうであったように、仕事をしていると、つい知らず知らずのうちに背広の上に「甲冑」を着るようになる。失敗談や欠点はできるだけ外に出さないようにして、身を守る。しかし、先の例のように、その場のコミュニケーションを良きものとしたければ、本来「甲冑」などは必要ない。

「立志塾」でも受講生同士まずは自己開示をすることから始めているが、そうすると、毎回「悩んでいたのは自分だけじゃなかったんだ」との声が聞こえてくる。誰しも悩みは持つものだ、と分かるのは大きい。そこから初めて、肩ひじを張らないコミュニケーションが生まれていく。

イノベーションを起こしたりダイバーシティを推進していくにも、自己開示はいい潤滑油となる。多様なアイディアを集めそれを活かしていくためには、立場・目線を同じくし、ざっくばらんに話ができることが必要だ。確かに、日本は文化的にも「暗黙の了解」を好む傾向にあるし、仕事をする上で逐一全てを話したり聞いたりしていては効率は上がらない。しかし、もう少し肩の力を抜いてお互い話ができたら、もっと解決できる課題も多いのではないか。年齢や役職や性別などバックグランドの違いを越え、より身近から語り掛けてくる相手の言葉に、人は共感したり突き動かされたりする。

「立志塾」に登壇いただいているゲストは、いずれも経営者や役員など企業トップとして手腕をふるわれてきた方々だ。「今」だけに焦点をあてると華々しいが、誰しもがそうであるように、紆余曲折を経ての「今」である。登壇いただく度、そうした過去の紆余曲折を含め受講生に対して爽やかに自己開示をされるから、さすがだ。「生き方」「働き方」について、失敗談を交えながらも、説得力のある惹きつけられるお話しぶりである。

ゲストの1人である石村弘子さんは、外資系IT企業の日本代表をされている。新卒で入社した銀行を3年で辞め、その後専業主婦として10年間アメリカで暮らした。帰国後、仕事については0からの再スタートだったが、色んなご苦労を経て現在に至る。そうして振り返ったご自身のキャリアを、最後は「振り返れば一本道」とまとめられている。一見繋がりがないように見える人生の経験も、実はどこかで繋がっている。まっすぐでもジグザクでも、自分が歩いてきた人生の軌跡は一本である。仕事があるということはありがたいことである。そして、仕事は面白い。

受講生のほぼ目の前という位置で、まさに「ざっくばらんに」ご自身について語っていただくお話からは、人生の選択肢が一つでないことを教えられる。そしてそんなお話を、受講生は我が身と重ね合わせながら聞く。それから最後はやはり、「ざっくばらんに」質問をする。

結婚・出産・育児・介護・伴侶の転勤等、特に女性にとっては、キャリアは複雑に見えるかもしれない。しかし、自己開示によってそれぞれが抱える問題を共有し合ったり一緒に解決策を探したりしていると、複雑な問題もだんだんとシンプルになっていく。

甲冑を脱いで集まってくるのは、敵よりも味方の方が多い。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」3月号

企業改革について

先日、「水上温泉を創生したニュージーランド人~よそ者・ばか者・若者が地域を変える~」と題して、マイク・ハリスさんによる講演会を開催した。主催は「一般社団法人彩志義塾」と「世田谷ビジネス塾」。その様子はこちらから(短い動画もあり)。
http://saishi.or.jp/201703011339.html

地方も同様であるが、企業も変化していかなければいけない。「のんべんだらり」と過去と同じことを続けていては、激動の時代においていかれる。技術の進歩、人口減少などの社会構造の変化、通信・輸送の進化、競合の進出など、企業をとりまく環境は刻一刻と変わってきている。その変化に対応できない会社は、「ゆでガエル」となってしまう。

何度も申し上げて恐縮ながら、変わろうとすると必ず現れるのが、反対勢力である。これは、過去をそのまま踏襲している時には出てこない。ジョン・コッターの「かもめになったペンギン」(ダイアモンド社)に出てくる「ノーノーペンギン」である。

私は、在日米国商工会議所のメンバーで、同会議所が主宰する講演会や勉強会によく足を運ぶ。2000社を超えるメンバーがおり、3分の1が米国の会社、3分の1が日本の会社で、後はそれ以外の国々の会社。普段聞けないようなビッグネームのスピーカーもよく登壇する。そんな同会議所でよく話題になるのが、イノベーションや変化への対応についてである。多くの外国人登壇者が、「日本人は変わらない」「日本は変わらない」と指摘する。残念なことである。その上、聞き手の外国人はもちろん、参加している日本人ですら「フムフム」と首を縦に振っている。「明治維新など、日本が大きく変わった時代もある。武士200万人をクビにしてまで変化に対応したこともあるのに」と、そんな状況を見て私は内心憤りを覚えることもあったが、確かに現代については、危機感が薄く、蛮勇を奮っての変化への対応が乏しいことは認めざるをえない。

職業としている者が言うのもおかしいが、研修にもイノベーションが必要だと思う。長年相も変わらぬ研修をし続け、イノベーションらしきことはあまりやらない。例えば、日本型ワークショップという古式泳法がある。良いところもあるが、時代にあっていないところも多い。

(1)4−6人の小グループに分けて議論をさせ、発表するという形式。
(2)スキルを磨くことや学ぶことにこだわる割には、成果が出ない。
(3)研修慣れしている受講生が多く、「知識として知ってはいるが、行動できていない」

紙面の限りがあるので、今日は、上記の(1)について考えたい。

少人数でグループを作って議論するのは、確かに意味はあると思う。
(1)大人数より、少人数の方が発言しやすい。
(2)グループ毎になんらかの結果が出る。

しかし、こればかりでは過保護だと思う。

「ナビゲーターと書記と発表者を決めてください」、「結論と~を模造紙に書いて、発表しましょう」などは、幼稚園児に言っているようだ。必ず何かの結論が出て発表してくれるのであるから、「講師にとって」は非常に「楽」ではあるが。

本当に、この従来スタイルがベストなのだろうか。

時には全体議論も必要だと思う。少し前に流行ったハーバードのサンデル先生の「白熱教室」スタイルである。すなわち、1対Nの議論。

会社での実際の会議は、全体議論か、1対Nの会議である。グループ分けして議論するなど、ありえない。失礼ながら、古式泳法と言いたい。会議でモノ言わぬ参加者は、それまでである。会議が済んでから言っても誰も聞いてくれないのが、大人のルール。自分の意見を自ら挙手して言う人が、これから必要となる。だから、同じ研修をするなら、自ら挙手して自由に発言して学ぶことである。どうせ研修なのだから、トレーニングの意味で失敗すればいい。

もちろん、そうなったら講師は大変である。意見が出すぎればまとめるのに収拾がつかなくなるだろうし、一番困るのが、意見が出ない時である。少人数方式なら、個別議論をする、まとめる、模造紙に書く、発表する、議論するなど1時間や2時間は、「もつ」。しかし、意見が出ない時は、10分も持たない。

では、どうすればいいか。

アイスブレークができるよう準備をしておく。議論を引き出すテクニックを持つ。議論に引きつける人間力を身につける。それでも意見が出ない時に備えておく必要もある。豊富な事例を用意して、参加者に説明して意見を出させる。たくさんの質問を考えてきてぶつける。脱線するような答えが来ても、しっかりと受け答えをして、進行できなければいけない
。難しい質問が飛んできて分からない場合は、素直に「分からない」と答える勇気を持つ。

「パワーポイントを読み上げるだけ」や、「古式泳法の少人数の議論」なら、専門講師はいらない。

安全運転を望む会社も多いらしい。「研修をしている」という実績が大切であり、受講者アンケートで無難な回答が得られれば、それで良しとする組織もある。

社員教育が大切なことは言うまでもないが、受講者にとって本当にためになる研修にも、上記のようなイノベーションが必要であると思う。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」2月号

「働き方」の記事が賑やかに報道されている。日経の調べによると、上場会社301社の7割以上が働き方改革の最優先課題として長期時間労働是正をあげている。

以下は、課題の上位5項目である。

1、長時間労働の是正
2、女性の活用
3、子育て・介護と仕事との両立
4、仕事の進め方の見直し
5、時間・場所を問わない柔軟な労働環境の整備

政府の指導がなくても、企業が本気で「その気になれば」これら課題を解決するのはさほど難しいことではない。ただし、「その気になれば」という条件付き。現状を変えようとせず何も行動しないのに、改革が勝手に進むことはありえない。新聞を読んで社員の認識が高まり、働き方が変わっていくなんてことは、まず望めない。

働き方改革を難しくしているのは、過去から引き継いでいる経験、価値観、社内風土などである。改革の際に必ず現れる、「ノーノーペンギン」だ。(ジョン・コッター、「カモメになったペンギン」参照)。日立のV字回復を成し遂げた川村隆さんの「ザ・ラストマン」(川村隆、角川書店)からも、学ぶところが非常にたくさんある。まさに企業変革のお手本である。これにも改革を阻害する多くは「社内」の反対勢力であるとしている。

ノーノ-ペンギンの存在を踏まえた上で、改革を推進していくための具体策を3つあげる。

1、副業禁止・副業届出制度をやめる(対若手)

基本的に、残業を好んでするという価値観を持った若手社員は少ないようだ。ただ、”残業代を稼ぐための残業”も、なくはない。副業は自己責任とした上で、企業は「効率的に仕事を済ませ、夜また別の職場で頑張って稼ぎなさい」と伝える。協業禁止条項もあり。

2、「働き方」についての価値観を統一する(対マネジメント層)

本部長クラスや役員等を含め、管理職以上の社員が、「働き方」についての意を1つにする。残業について言えば、先のメルマガでも書いた通り、管理職や本部長の1人でも「残業は美学」として評価してしまうと、部下はそちらに流される。「残業代は支払う。ただし、残業をするからといって、残業は昇進などの評価には入れない」なのか、「残業代は支払うし、残業する熱意も評価に入れる」なのか。経営会議や取締役会で方針を明確にし、全社で共有するのが良いと思う。「その気になって」とは、そうやって経営の決意として示すことだと思う。

ちなみに、今でこそ優先課題とされる上記5つも、昭和時代にはほとんど話題に上がらなかった。昭和の価値観に照らしてみれば、「新しいこと」「知らないこと」「ほんまかいな」である。

1980年代のビジネス書が手元にある。その巻末には出版社の広告としていくつか別の書籍名が列挙されている。「松下幸之助は語る 情熱がなければ人は動かない」。「土光敏夫は語る リーダーよ、自ら火の粉をかぶれ」。書籍のタイトルはほとんどを出版社がつけているのだが、問題は次である。「堤義明が語る 休日は欲しければ管理職を辞めよ」。これぞまさしく、昭和の価値観である。今このようなことを言えば、ブラック企業と評されるだろう。時代は確実に変わってきている。

3、オープンな土壌を整える

いろんなことを社外秘にしたがる企業は多い。しかし、働き方改革の内容まで社外秘にするメリットは何だろうか。時代の変化に合わせて変わっていかなければならないのは、どこの企業も同じである。変わろうとするならば、もっとオープンになって社内外の知恵や意見を取り込むことが大切である。他社や外部アドバイザーから意見を得る。自らも持っている情報は外に出す。社員は社外で交流して刺激を受ける。改革には「よそ者、バカ者、若者」を交え、ダイバーシティ的視野(複眼的視野)をもって取り組みたい。

【お知らせ】

(1)新春講演企画「みなかみ温泉を創生したニュージーランド人~よそ者・ばか者・若者が地域を変える~」を開催します。

第1部では、みなかみ町活性化の立役者”マイク・ハリス氏”より地方創生の実際についてお話を伺い、続く第2部では、地方創生と企業改革についてのパネルディスカッションを行う予定です。

 ◇日時:2017年2月18日(土)16:00~18:00
 ◇場所:駒澤大学大学会館246(駒沢大学キャンパスとは異なりますのでご注意ください)
 ◇定員:80名(先着順)
 ◇費用:3000円
 ◇申込み:コチラよりご登録下さい   

(2)第7期「立志塾」好評受付中

第7期「立志塾」(4月開講)の募集を開始しました。〆切は2月28日です。
また、引き続き無料見学会も開催します。オブザーバーとして午後部の講義を無料で聴講いただけます@赤坂見附。

 ◇2月11日(土)13:00~17:00
  ゲスト:大手外資系金融役員
  詳細:コチラ

ご見学希望の方はお気軽にご連絡ください。
info@saishi.or.jp

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