古川裕倫の「いろどり徒然草」2019年6月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第12回)

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竜馬に学ぶビジネスの要諦(第12回)
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リーダーシップ(2)―完成の功を譲れ

前回は、日々の仕事で部下のモチベーションを高めるには、部下に仕事を任せることが一番だと申し上げた。任せてもらうことは部下冥利(みょうり)につきることは経験上ご存じのことと思う。ところが、これが結構難しい。わかっていてもなかなかできない。リーダーの大きな悩みでもある。

私自身もこれに大いに悩んだことがある。あるとき、非常に優秀な部下が「古川さんは、普段は大所高所の話をしますが、時に非常にささいな事まで(任せずに)指示することがあります。その基準は何ですか」とやんわりと笑顔で聞いてきた。「なるほどその通りかもしれない、言われて初めて知った」と内心で思ったが、残念ながら部下への答えは持ち合わせていなかった。

今振り返ってみるとお恥ずかしい限りであり、当時の部下には申し訳ないことをしたと思う。その後、いろいろ経験して多少なりとも学んできたので、私なりの答えをご紹介したい。

■仕事を任せられない理由
 

上司が部下に仕事を任せられない理由を研修や会議など多くの場面で議論した結果は、だいたい次のとおりである。

第1に、部下に十分な能力がないと思うから
第2に、結果が心配だから。部下の失敗は自分の責任となる
第3に、自分でやるほうが早いから

 このほかにも、部下にやり方を説明するのが面倒であるとか、おもしろい仕事は自分がやりたいからというリーダーとして論外な理由もあるが、本連載の読者もここに挙げた3点に多少なりとも心当たりがあるのではないだろうか。

■責任の所在が不明確ゆえに悪循環に入ってしまう

 まず第1の理由。まだ部下の実力が十分ではないと思ってしまうので任せられない(任せない)。たしかに、上司は経験も積んでいるし知識も部下より多い。しかし、ここは自分の経験や知識を基準にするのではなく、その仕事をするのに部下が「それなりの実力」があるかないかを判断基準にすべきである。

もう少し正確にいうと、「それなりの実力」というのは、「十分な力」でなくても、その基準よりちょっと足りなくても構わない。むしろ、ちょっと足りないぐらいで任せるのがちょうどいい。自分の実力より少し高いところに手を伸ばすほうが、自分の成長につながる。反対に、自分の実力以下の仕事ばかりしていれば成長はしない。

 順番が前後するが、第3の理由。自分でやるほうが早いので部下に任せたくないと考えるリーダーは度量不足だろう。前回申し上げた通り、部下の成長のためには「待つのも(上司の)仕事」なのである。

第2の「部下の失敗は自分の責任」が最大の問題である。これがネックになって部下に任せられないことが実際には多い。

上司からすると、「任せたけれど、お前がちゃんとやらないし(遂行しない)、(経過も含めた)報告も少ないじゃないか」、だから上司として責任は取れない、ということになる。

一方の部下からすると、「あなたがやれと言うからやったんです。うまくいかないと自分(部下)が悪いと言われるのはたまらない」ということになってしまう。

これは、まさに責任の所在が不明確だからではないか。その結果、「上司は任せない、部下は余計なことはしない」、「上司は何から何までやらなければいけない、しがたって部下は育たない」という悪いスパイラルに入ってしまう。これでは新しい仕事に挑戦できず、過去の成功例だけを踏襲することとなり、成長もしなければダイナミックな会社にもなれない。

では、どうすれば責任が明確になるのか。そして、部下に任せるということがしっかりできるようになるのか。
紙面の都合で、任せるにはどうすればいいかについては、次号に譲りたい。
(「その答えはコマーシャルの後で」という安物のテレビ番組のようで恐縮です)


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