財界(2013年7月9日)

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夏季特大号

2013/7/9発売

財界(2013年7月9日)ずいひつ

経営者は、思い切って女性を登用してほしい

古川裕倫 [Woomax エグゼクティブ・アドバイザー]

「世田谷ビジネス塾」という無料の読書会を始めて6年になる。フェイスブックグループへの登録者は350名ほどで、月1回土曜日に開催する塾には30名以上が参加している。年齢的には、下は大学生から上は60代まで。男女半々ぐらい。

塾では、自分が読んでよいと思った本を参加者に紹介し、議論する。学び心の高い参加者にとってはこれがなかなかおもしろく、私自身の勉強にもなっている。ビジネス書、自己啓発書、歴史書、伝記、経済書などが主に紹介され、「志」「行動力」「グローバリゼーション」「ダイバーシティ」「女性活躍推進」などのテーマが深掘りされている。

私は、三井物産とホリプロで合計30年間サラリーマンをし、今は「先人・先輩の教えを後世に順送りすること」に専念している。本を書いたり、社外取締役をしたりであるが、この塾は一番手ごたえがある。

5月に上梓(じょうし)した『女性を活用できる上司になる(古川裕倫、扶桑社)』は、男性向けに女性活躍推進の重要性を訴えたもの。私は、経営陣や中間管理職が女性活躍推進をしっかりと理解し、自ら積極的に参加し、協力することが必要だと思う。

少子高齢化による生産労働人口減少が進み、女性の活躍が期待されている。政府の成長戦略にも取り上げられてきたのはご承知のとおり。実際にどこまで効果があるかは別にしても、このような政策が明確にされたのは画期的なことではないか。

ただ、現実は「総論賛成、各論風まかせ」という会社が多いのではないだろうか。ダイバーシティ推進室や女性活躍推進室などが大手会社の人事部などに設置されつつあるが、女性活躍推進の研修などは、女性講師が女性社員だけに向けて行っている例が多い。女性に対する啓蒙も必要だが、その多くが上司たる男性管理職も教育する必要がある。在日米国商工会議所は、昨年Woman in Businessという委員会を立ちあげたが、これに関するイベントはすべて男性歓迎である。

女性参画が世界で最低レベルの日本の会社文化を変えるには、トップの強いメッセージが必要だ。女性の活躍を「そのうち変わるだろう」「だれかが変えるであろう」としか捉えていない多くの男性中間管理職を変えないと、動きが加速しない。

私自身も本を書き、外野から叫んでいるだけでは、ずるいと思う。だから、ライフワークとして、実際に女性の育成に取り組もうと思っている。7月から「女性幹部を目指す大学生のための本気塾」(女子大学生対象)を、9月から「女子社員立志塾」(女性社員対象)を立ち上げる。両塾では、1人でも多く将来の女性役員を育てるべく、「生まれてきたからには一事をなす」「女性も一生働く覚悟を決める」など将来を考える場を提供し、人生の目標などの気づきを教えたいと思っている。現役の取締役との交流もできるようにする。

女性にも改めるべき点はしっかり言いたい。入社までは男性に比較して優秀であった女性が、本領を発揮せずにいつの間にか男性に抜かれてしまう。与えられたことしかしない女性もいれば、責任の重い仕事はしたくない女性も多い。自らの枠を取り払い、会社や社会に貢献できるよう積極的に生きてほしい。

労働人口減少が進むと、一挙に女性活躍推進が加速し、「われもわれも」となるのではないかと想像する。しかし、人は直ぐに育つものではない。時間をかけて教育をして、初めて重要なポジションへの登用が可能になる。だから、早くから着手する会社が勝ち残ると私は思う。

財界(2013年7月9日)表紙

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