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古川裕倫の「いろどり徒然草」2019年1月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第7回)
~成長するための気づきと学び その1~

高い志を持った大きな器の人間がしっかり行動する――。これまでの6回の連載で取り上げた「志」「人間力」「行動力」の3要素がそろっていれば、ずいぶん魅力的な人間になるに違いない。竜馬はそんな人物だったと言えるだろう。

●「気づき」を行動へ移すことで人間は伸びる

藩の殿様にお目通りのかなわぬ下級藩士であった竜馬は、幕臣勝海舟、薩摩藩西郷隆盛、長州藩桂小五郎、福井藩主松平春嶽らの要人に認められた。また土佐、江戸、京都、長崎など活躍したほとんどの土地で女性をも魅了した。京都近江屋で暗殺されて140年以上経った今でも、竜馬は小説やドラマ・映画の中でヒーローとして描かれ、私たちのずっと後の世代でも語り続けられるであろう。

そんな竜馬も神童だったわけではない。最初から国を動かすような立派なリーダーだったわけでもない。普通に生まれた人間がだんだん進歩し、成長していったのだ。

古今東西の優秀な企業トップにも、新入社員や駆け出しの時代があり、後に実力を伸ばし経験や知識などを蓄積してきた。部下を初めて持った若き日は、言うまでもなく、だれもが新米リーダーである。そこから器の大きなリーダーに成長するか、しないかの違いが生じる。

優秀だと言われる人は、自分を磨き高める必要性を人生のある時点で自覚する。それを私は「気づき」と呼んでいる。そして、「気づき」を行動へと移すことによって、車のギアをトップに入れたような状態になり、グンと成長し始めるのである。それはなだらかな右肩上がりの曲線ではなく、急激な上向きのカーブで伸びていくのだ。

「竜馬は子供のころ勉強嫌いだった」

司馬遼太郎さんは『竜馬がゆく』(文春文庫)の中で、竜馬の幼少時について、意外にも次のように書いている。

「城下でも阿呆あつかいでした(五巻367頁)」

竜馬は幼いころから勉強が不得意だったのだ。教育者に採点され、侮辱され、劣等感を植えつけられたと竜馬は思っていた。

ただ、人の話を聞いて柔軟に受け入れることができた。後年、勝海舟との出会いで海外事情の説明に大いに感化を受け、それをすぐに受け入れたのもそうした資質に恵まれていたからだ。好奇心が強かったのだろう。

不得手な学問のことはさておき、竜馬は剣術には長(た)けていて、江戸の千葉道場で修行し北辰一刀流の免許皆伝の腕前となった。そんな名誉を掲げて土佐に戻った竜馬に、兄権平は地元で道場を開いて落ち着くことを勧めた。

ところが、竜馬はそんな兄に対して自分の胸の内をこう語り、説得を試みている。

「わしや、学問をしようと思うちょるんでおじゃりますわい」
「が、がくもん?」これには、権平も爆笑した。
「学問は必要じゃとわかった。古今の書を読み、かつ西洋の書も読みたい。読んで、わしがこの手で、こんな腐った天下をなんとか動かしてくれようと思ちょります」
「天下を?この法螺坊主め」(二巻164頁)


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[会場] ウィン青山2階E(「青山一丁目」駅5番出口より徒歩1分)
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     3. 会社役員・ロールモデルとの意見交換
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 ▼ご見学お申込み
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▼「立志塾」受講者の声
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古川裕倫の「いろどり徒然草」7月号

人は死に方は選べないが、生き方は選べる
~危機をチャンスに変えた男たち~

あれから6年4ヶ月。
 
東日本大震災でほぼすべてを失った気仙沼の水産加工メーカーが、驚くべき速さと決断力で再建を果たし、明るい未来を築こうとしている。志高く、熱い思いを持ったビジネスリーダーたちから筆舌に尽くせないような大きな感動をいただいた。

この6月4日・5日、中井ビジネスコンサルコンサルタント(東京都千代田区、中井英一社長、69歳)の特別企画として、勉強会会員が気仙沼を訪れた。私も参加させてもらった。中井氏の東京での月例勉強会には、50−80人が参加しており、今回の気仙沼ツアー企画には26名が参加した。このように人が集うのは中井氏の人脈の広さと、人間力の高さが理由。わかりやすくいうと、笑顔のいい熱血オヤジである。

中井氏は、もともと三井物産に勤務していたが、縁あって、株式会社オークネット(東京港区、藤崎清孝社長)に転職、同社副社長を15年勤めた。

中井氏は生家が津波で完全に流されてしまった故郷気仙沼に貢献すべく、震災後すぐにオークネットを退社し、まだ交通が遮断されている頃から気仙沼に足繁く通った。なんと今日まで東京・気仙沼間を何と85回も往復している。

気仙沼には、地元の優れたリーダーたちがいた。東日本大震災で壊滅的打撃を受けた水産加工メーカー19社が気仙沼鹿折(ししおり)加工協会という組合を立ち上げた。

理事長の川村賢壽氏(株式会社かわむら代表取締役、67歳)と副理事長の臼井弘氏(福寿水産代表取締役、66歳)が中心人物。お父様同士も地元で同じ鰹節のビジネスをされていて、川村氏と臼井氏は幼い時からの顔見知りであった。その後、川村氏はワカメやイクラの加工メーカー、臼井氏はフカヒレメーカーとして事業を開始し親交を深めた。津波直後はどちらも事業再開を一時はあきらめていたが、川村氏は、イクラの原料である鮭が収穫される10月までに、複数の施設を修復・新設することを決意した。意気消沈していた臼井氏を勇気づけ、ともに手を取り合って再建しようと誓った。所謂「戦友」である。

かわむらは、震災前に気仙沼と「奇跡の一本松」で有名な隣町の陸前高田に合わせて26か所の生産・貯蔵施設を持っていたが、そのうち22の施設を失った。損失金額は80−100億円という。

再建準備を進める障害は、冷蔵庫の在庫であった。震災直後に2割ほどの従業員が気仙沼から他の地域に引っ越していったが、かわむらに残った社員たちは会社の復帰に大きな期待をかけていた。電気が来ない冷蔵庫では、魚が腐り異臭が立ち込める中で清掃作業をしなくてはならない。冷蔵庫から仮事務所に戻ってくる社員の体からも強烈な匂いがする。2ヶ月間もひたむきに清掃してくれた社員に川村氏は、心から感謝した。

我々がお邪魔をした新しい施設は、とにかく綺麗で機械設備も鏡代わりに使えるほどピカピカに掃除されている。従業員は礼儀正しく、親切。5S(整理・整頓・掃除・清潔・躾)がしっかりと効いていると感じる。

川村氏は、講演の中で一冊の本を紹介された。ガンで闘病中のオークネットの創始者藤崎真孝氏が残した「正見録(しょうけんろく)」という経営の要諦を綴った本であった。例えば、社員の信条として「易きになじまず難きにつく」(楽な道と困難な道があれば、困難な道を行け)、経営者の信条として「事業とは顧客の創造なり、人に喜ばれてこそ会社発展する」など。川村氏はこれらの言霊を心の支えとして困難を乗り越えてきたという。オークネットは災害直後からCSR活動の一環として多くの社員を気仙沼に派遣していた。

大変僭越ながら、最近の多くの日本企業は「あまえ、ヌルマ湯、ポアーンの如し」であると私が(偉そうに)申し上げているが、この日はまったく違う企業を拝見した。川村氏は笑顔が素敵ではあるが、目力がある。危機を乗り越える勇気と信念を持った本気のリーダーである。偉そうにしている大会社の安物の社長とわけが違う。「ポワーン」としている会社とは違う。哲学がある。志の高さが違う。そして決定的に違うのは「危機感」。

かわむらの会議室には、「社員の条件」という掲示がある。その項目の中にこうある。「挨拶、当たり前のことを徹底して身に付けよ。挨拶できなくて一人前になれるわけがない」「整理整頓、上手な整理整頓が仕事の生産性と能率を向上させる」。さらに「以上のことができて初めて社員の資格あり」とある。

立派な会社は、社員教育をきちんとしている。従業員指導が徹底していて、ちゃんとモノが言えている。

「会議に出たら必ず発言、沈黙は「禁」なり」とユーモラスな掲示もある。部下も人前でモノ言える人となるべし。

その他、もっと多くの会社や個人がこの気仙沼のプロジェクトに直接・間接的に貢献されているが、この紙面の事情でご紹介できないのが残念。

冒頭の「死に方は選べないが」とは、今回の震災のように自分の意思とは全く別の理由で亡くなる人もあるという意味。しかし、どう生きるかは本人次第。深い言葉である。

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